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壁に向かって話す人間のブログ

【小説感想】時砂の王

時砂の王

時間遡行SFとその情緒

 

突如として現れた人類殲滅生命体ETを相手に時間遡行しながら闘い続ける一人の男の物語。時間遡行なのでころころ場面は変わるものの、主な舞台は古代日本の邪馬台国の時代、サブヒロインは卑弥呼こと彌与ちゃん。

 

やはり第一の感想としてはたかだか単行本一冊のサイズなクセして、話のスケール感がとてつもなく大きいという部分になるでしょう。味方サイドが時間遡行するだけでなく、相手も時間遡行を行い、しかも周到な戦略で人類を滅ぼしにかかるところ。その執拗さがこのスケール感につながっているのかな、と。(しかもその周到な戦略にもきちんと理由がある)

とはいえ、ストーリー時代もそのスケール感に負けていない。主人公はメッセンジャーと呼ばれる、時間遡行作戦のために作られたアンドロイド。このアンドロイドがとある女性と恋愛をするんだけど、これが時間遡行する中での葛藤に上手く縛りをかけている。なんのために戦うのか? 俺たちはどこへ向かうのか? 戦う先に何があるのか? というモヤモヤ。このモヤモヤが読んだ感じ主人公は消化しきれないまま死んでいくんだけど、それを受け継いだのがサブヒロイン卑弥呼なんだよなあと。ラストの怒涛の展開からの勝利の福音のシーンは、ガッツポーズ間違いなし。

 

総じて、この短さでここまでのスケール感はすごい。コスパ最強じゃんと思う。ただ、ETの戦闘周りに関して雑な部分があるかなと思った。特に人類を殲滅する理由の部分はちょっと「えー」と思ってしまったり。

 

ただのゴタゴタしたSF要素以外にも、色恋交えたストーリーなんで、結構読みやすかったですよ。オススメ。