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ウォール2

壁に向かって話す人間のブログ

小説感想 イモータル/萩 耿介

小説

イモータル (中公文庫)

 

 

エンタメの新境地、哲学エンタメ本。

主人公は3人。現代の営業サラリーマンと、激動の時代を生きた2人の哲学者のお話です。

話の軸になるのはウパニシャッド(智慧の書)っていうヒンドゥー教の極意を記した本と、それに関する哲学の継承です。

キーワードは梵我一如。宇宙を支配する原理と、個人を支配する原理が一体であるというヒンドゥー教の教えです。

 

思想ってのは個人から出てくるものではなく、意見にしろ何にしろ、すべては他人から受け継いできたものであります。哲学はそれがわかりやすくて、哲学者には師匠的存在がおって、そこから考えを発展させて新たな結論が出てくる。

今作はそれを壮大なスケールでやってる。

激動の時代を生きた2人の哲学者、ダーラ・シコーとデュペロンは共に、ヒンドゥーの教えである智慧の書を翻訳した偉人。

ダーラ・シコーはムガル帝国の皇子で、弟と後継者争いをする最中ウパニシャッドペルシャ語に翻訳した。

デュペロンは東洋学者で、革命の潮流が巻き起こり始めたフランスでウパニシャッドラテン語に翻訳した。

共に翻訳されたウパニシャッドは、時代の波に呑まれることなく、後世に継承され、現代の主人公へと渡っていく。

 

個人的に、これがこの本のエンタメ的面白さですかね~。思想の偉大さ・俺たちの思うことすべて過去からの踏襲である・・・これだけでも面白い。

もうちょっと哲学に詳しい人なら主人公の葛藤なんかも詳しく読み解けると思うけども。詳しくない俺は、正直ラストはクスリキメてんのかコイツ・・・ってなりましたけど、面白いよ。

 

タイトルのイモータル(永遠)は、おそらく梵我一如の精神、消えない思想の継承を指しているのだと思う。デュペロンの翻訳したウパニシャッドは、ニーチェの哲学に多大な影響を与えたらしい。へー。